2015年10月29日木曜日

第12回特別講座「寒露の頃、超高層ビル街の谷間に響く羽音 みつばち×蜜源植物」

第12回特別講座は、寒露( 10月8日)に因み、10月7日に開催しました。
寒露とは、晩夏から初秋にかけて野草に宿る冷たい露のこと。この頃は、季節の移ろいをつなぐ秋雨を経て、大気の気温が下がり、空も澄んでくる秋の只中。秋の青空をバックに、冬の訪れよりも先に北からツグミ、ガン・カモ類が飛来する姿を見かけ始めますね。

今回の講座は、今年6月に開催した特別講座に続き「みつばちと蜜源植物」をテーマとして開催。関心を集めるテーマである為、多くの方にご参加いただいた講座になりました。その模様をレポートします。
会場は、おなじみの港区立エコプラザ。今回の講座は「エコプラザの立地環境」を十分活かした講座になりました。

そして、講座は、なんと!昼・夜の2部構成!
第1部(昼)は、港区立エコプラザからスタートして、実際に、都心の蜜源植物の生態観察&都心の養蜂場見学するワークショップ型の講座。
第2部(夜)は、「ミツバチ」という共通キーワードで、4人の講師のみなさんそれぞれの視点で生物多様性豊かさ、その大事さについての話を聞きながら、身近な自然環境を考えるレクチャー型の講座。
講師4人のみなさんは以下の通りです。
玉川大学・名誉教授の佐々木先生:「ミツバチと蜜源植物の専門家」の視点
鹿島建設株式会社 環境本部グリーンインフラGr.の青木先生:「生物多様性豊かな街づくりの当事者」の視点
新橋はつらつ太陽の施設長の高槻先生:「超高層ビル街で養蜂をしている当事者」の視点
トランジション世田谷茶沢会の水城先生:「低層住宅街で養蜂をしている当事者」の視点。

いつもの様に、アースデイ大学・代表の生姜塚のオリエンテーションで、講座はスタート。「寒露x里地x蜜源植物探し」という切り口から、身近な植物と季節の巡りの一役を担うミツバチを再発見・新発見するという内容です。

早速、第1部のスタート!港区立エコプラザから出発です。蜜源植物探しをしながら街歩きをします。ゲスト講師一人目の方は、玉川大学・名誉教授の佐々木先生。

会場を出てすぐのところにある桜の木葉に注目。植物は虫や鳥などの生きものたちとギブ&テイク、上手く共生しています。例えばこの桜の葉を見てください。葉と茎の間に、花外蜜腺という蜜を出すところがあります。木は、上手く花実をつける為に、蜜腺から蜜を出すことでアリを寄せ付けて、他の虫を遠ざけようとします。要するに、桜はの木は、アリをボディガードとして呼び寄せているのですね。

エコプラザの向かいにある神明いきいきプラザには、大きな葉をもつ朴(ホオ)の木があります。昔の人は、大きな葉をお皿の代わりにしたり、強い香りで食材を雑菌から守るために包んだりと活用をしていました。しかも、この木は、高いところに強い香りを放つ大きな花をつけるんです。ミツバチは選り好みをしないで、どんな花にでも飛んでいくのですよ!
<朴木>

いきいきプラザの脇を進んで行きます。生垣に使ったりする正(マサ)木の茂みがあります。この木は、白い小さな花をを付けます。香りは、フローラルな香りから程遠く、魚が腐ったような香りを放ちます。ということは、この花は主にハエを呼び寄せているのですね。もちろん、ミツバチも蜜を取りにいきますよ!
突き当たりの線路脇。昔よく見かけたオシロイバナがたくさん!みなさん、オシロイバナにミツバチは蜜を取りにいくでしょうか?この花は、花びらから細く深いところに蜜があります。残念ながらミツバチの口吻では届かないので、近寄りません。世界で一番長い口吻、約30cmの長さをもつのは、マダガスカル島に生息するスズメガです。このスズメガと共依存している植物は、大きなランの花です。
<オシロイバナ>

線路脇には色々な植物がたくさん!この実、何だと思いますか?ムカゴです。小さな山芋のような食材で、ちょうどこの季節、晩秋の味覚としてムカゴの炊き込みご飯がありますね。線路脇で思わぬ秋の味覚を発見!線路脇での収穫?!楽しいですね。
<茶色の実がムカゴ>

線路脇を進んで線路をくぐる前に空を見上げると、澄んだ秋空を背景に超高層ビルと手前に一軒家。よく見てみると、二階の屋根まで届くくらいの大きな枇杷(ビワ)の木がありました。ビルの谷間で、昔ながらの日本家屋のお庭の風景を発見!
<枇杷の木>

枇杷の木は、ミツバチにとって冬を越すための貴重な蜜源植物の一つでしたね!これからの11月〜2月の寒い時期に、白い小さな花が長い期間咲きます。

線路の下のトンネルをくぐり抜けます...
...どんな景色が広がっているのか楽しみ!

反対側の線路脇には、黄色の花がつくセイタカアワダチソウでいっぱい!この花にもミツバチはせっせと蜜を取りにいきます。この植物は、短日植物といって、夜の暗い時間が長く、昼の明るい時間が短くなると花が咲きはじめます。ということは、街灯が当たる場所にあると、いつまでたっても花が咲かないということです。なるほど〜夜は夜の暗さ、昼は昼の明るさという、自然に逆らうことなくあることが大事なんですね!
萩(ハギ)は、山に自生する蜜源植物です。トウネズミモチの苗木もありました。この木の花にミツバチが蜜を取りにいって、その後、濃い紫色の実がなると鳥たちが食べにいくんですね。桐(キリ)の木も山に自生しているのですが、種が小さいので風や鳥の羽に乗って増えていきます。昔は、女の子が生まれると庭に桐の木を植えました。その娘が結婚する時には、桐の木で箪笥を作りました。身体を大事にする、健康を保つための着物を保管する桐の箪笥。親心ですね。
ツタは、6月に毎日15時頃、イネは11時頃になると花が咲きます。その時間になるとミツバチは蜜を取りに飛んでいきます。耳を澄ませば、ミツバチの羽音を聞くことができるでしょう。ツキミソウは、夜になると花が咲くので、夜に活発に動く虫をあてにしている植物になります。太陽が昇る前の早朝、咲き残っている花をめざして、ミツバチは蜜を取りに飛んでいきますよ!トキワハゼは、実から蝋がとれるます。昔の人は、ハゼの実で和蝋燭を作っていました。
アカメガシワは、桜の木と同じで、葉と茎の間にある花外蜜腺から蜜を出します。アリにパトロールしてもらっている木ということですね。
<アカメガシワ>

なぜこんなにたくさんの種類の植物が繁茂しているのでしょうか?港区の職員のみなさんがせっせと種を蒔いた?風や虫たちが種を飛ばす、運ぶこと、受粉に貢献していることは勿論のこと、遠くから一気に種を運ぶ役目を担っているのは、鳥たちです。植物を見れば、どんな鳥たちが飛来しているのか分かるということですね!

新橋のビル街に向かってトンネルをくぐっていくと...
...先ほどまでの風、鳥、虫により群生していた植物のある風景とははガラッと変わりました!

新橋のビル街は、コンクリートの石畳が続く、ヨーロッパ風の景観に整えられていて、花壇の手入れも行き届いています。
ミツバチにとっては、ビル街にある花壇の花の蜜も取り放題。

葉が疎らな科(シナ)の木は、北海道によくある木で、花の蜜が甘い香りのため、タバコの香り付けに使われています。
<科の木>

栃(トチ)の木は、赤い花がつきます。これも蜜源植物の一つで、ミツバチが好んで飛んでいく木です。
<栃の木>

コブシの木にも赤い実がつき始めていました。昔の人は、コブシの花が咲いた時(3月中旬)が畑の種まきの時期という、自然暦の目安としていた木です。
<コブシの実>

木に付く花は、その時々の天候により花がついたりつかなかったりします。また、受粉した後に実が付くのも虫に依るので、虫がいないと大変なことになるのです。


駐車場の植栽に目を向けると...緑色の葉の所々からピンクやオレンジ色のイタドリの花を発見!まるで夏の夜空に打ち上がる花火のよう。
<イタドリ>

ピンク色の花は、昨日咲いた花で蜜はもう無い花。オレンジ色の花は、今日咲いた花で蜜がある花。そのことをミツバチはちゃんと学習しているんですね。

イタドリはヤブガラシとも言います。薮を枯らしてしまうくらいの繁茂力、ということでしょうか。この植物も雑草と言われていますが、地域によっては食べたりしますし、勿論、蜜源植物でもあります。6月の講座で講師をしていただきました、日本みつばち飼育インストラクターの後藤さんが以前、「イタドリはどこにでもある植物だけど、雑草ということで夏前に刈り取ってしまうから、どんな花が咲くのか知らない人が多い。」と話していたのを思い出しました。
学校帰りの小学生も「何を見ているの?」とやってきました。伝えるということ、知るということ、そこから始まるんだなぁと痛感。
先生曰く、「イタドリの蜜はマスカットブドウのような味なんだよね〜」と。美味しそう。


港区立エコプラザから歩くこと約1時間ちょっと。養蜂の現場「新橋はつらつ太陽」に到着!
...エレベーターで8階、扉を開けると「うわー都会のビル街の只中にいる!」手をのばせば東京タワーをはじめとしたビルを掴むことができそうな近さです。

ここで、玉川大学・名誉教授の佐々木先生から新橋はつらつ太陽の施設長の高槻先生へとバトンタッチとなります。佐々木先生、お疲れさまでした。高槻先生、よろしくお願いします!
「みなさん!ようこそ!私たちの施設では、桜川みつばちプロジェクトとして西洋ミツバチの養蜂をしています。これからみなさんに、ミツバチの巣箱を近くから観察してもらいます。」

早速、網つき帽子を被って準備します。この帽子を被るだけでテンションが上がりますね!準備できた方から巣箱のあるエリアへ入っていきます。ミツバチの羽音が元気よく響いています。ワクワク。
みなさん、一斉にカメラを向けて何を見ているのか?というと、巣箱の中に1匹だけいる女王蜂です。どれ?という感じですが、よーく見ると1匹だけ縞模様の薄い大きめの蜂がいるのですが、それが女王蜂です。
西洋ミツバチは、家畜として飼育するということなので、必ず巣箱に戻ってきます。ミツバチの飛行距離は、巣箱から半径2〜3kmです。ということは、新橋の巣箱を中心に見たら、皇居、日比谷公園、浜離宮公園、勝どき橋、泉岳寺、六本木ヒルズ、という辺りまで採蜜しに飛んでいるということになります!往路は身軽ですが、復路は蜜をたくさん抱えているので8階の巣箱まで戻るのはきついということでしょうか?佐々木先生に質問してみました。「そうだね、人間が両手にかなりの重さの荷物をもって階段で8階まで上がるのってきついでしょ?それと同じかそれ以上に大変。風も吹くしね。」ということでした。

蜂蜜のテイスティングをさせていただきました!実際に養蜂の現場を見て、知ってからのテイスティングは、貴重な体験になりました。
「どんな味だろう?」「美味しい!」楽しいひと時です。

そろそろ太陽も傾いてきたので、第1部(昼)の講座も終了となります。
佐々木先生、高槻先生、ありがとうございました。

みなさん、お疲れさまでした!...
...第2部(夜)の会場となる港区立エコプラザに戻ります!「あれ?」あっという間にエコプラザに到着しましたよ。

これから第2部(夜)の講座がスタートします。
講座は、「ミツバチ」という共通キーワードで、4人の講師のみなさんそれぞれの視点で生物多様性豊かさ、その大事さについての話を聞きながら、身近な自然環境を考えるレクチャー型になります。
玉川大学・名誉教授の佐々木先生:「ミツバチと蜜源植物の専門家」の視点
鹿島建設株式会社 環境本部グリーンインフラGr.の青木先生:「生物多様性豊かな街づくりの当事者」の視点
新橋はつらつ太陽の施設長の高槻先生:「超高層ビル街で養蜂をしている当事者」の視点
トランジション世田谷茶沢会の水城先生:「低層住宅街で養蜂をしている当事者」の視点。

まずは、第1部(昼)の講座、蜜源植物探しの振り返りをします。
エコプラザから新橋はつらつ太陽までは、徒歩約5~10分くらいの距離です。短い距離だとしても、蜜源植物探しをしながら歩くだけで1時間は掛かるほど、たくさんの植物、鳥や虫たちの痕跡を都会の超高層ビル群の中に発見しました。そして、参加したみなさんは、そういった生きものたちが季節の移ろいの一役を担っているということも再発見・新発見したのでした。

次は、講師のみなさんの視点でのレクチャーになります。
まずは、青木先生の「生物多様性豊かな街づくりの当事者」の視点からになります。
「生物多様性豊かな街づくりの当事者」の視点から。街づくりをする際には、自然の恵みを実感できる仕組みとその恵みの仕組みを理解する場を作っていくことが大事です。

佐々木先生の「ミツバチと蜜源植物の専門家」の視点から。日本ミツバチの養蜂技術は江戸時代から発展して現在に至っているけれども、特に都会では、花資源を共有する他の虫がいないという異常なことが起きている為、都市養蜂で一つの巣箱から年間約50kgもの蜂蜜が採れるということが生じています。また、日本ミツバチハチは、過労、気温、移動によるストレスの負荷もかかり、資源争いが起きている状況です。
「僕の子供の頃は、例えば、アゲハチョウが卵から必ず孵化するわけではない。チョウの卵を食べる虫がいたから。今は、必ず孵化する。他の虫がいないからね。」

トランジション世田谷茶沢会の水城先生による「低層住宅街で養蜂をしている当事者」の視点から。庭木のある一軒家が立ち並ぶ環境で、日本ミツバチを養蜂。日本ミツバチは、野生種のため、より過ごしやすい環境を見つければ、巣まるごと大移動をするので、最初に周辺の自然環境の下調べも大事です。巣箱は、古民家の軒先、直射日光の当らない風通しのいい場所に設置。
日本ミツバチを介した自然とのつながりは、様々な蜜源植物からミツバチが集めた百花蜜だけでなく、蜜蝋で床や家具を磨いたり生活の中に活かすことで見出すことができます。

新橋はつらつ太陽の施設長の高槻先生による「超高層ビル街で養蜂をしている当事者」の視点から。超高層ビル街の谷間、8階という環境で、西洋ミツバチを養蜂。西洋ミツバチは、家畜化したミツバチのため、人間が手入れしないと生きていけない種類です。西洋ミツバチは、採蜜し終わったら必ず元の巣箱に戻ってきます。でもなぜ?それは、ミツバチが自分の巣箱の周辺の様子を記憶しているのと、群れの匂いがあり、巣箱の入り口で見張り番役のミツバチが見張っているからです。
西洋ミツバチを介した自然とのつながりは、新橋のビル街を歩いている時に植栽の中にミツバチを見つけると「ウチのミツバチかな?」と思うようになり、自然の移ろいに気付くことでもある。また、障害者施設での養蜂ということものあるため、蜂蜜を通して、社会とのつながりをもつきっかけにもなっています。

最後に参加者からの質問。「生物多用豊かな自然を取り戻すにはどうしたらいいですか?」
「生物多様性豊かな街づくりの当事者」の視点からの青木先生は「自分事として原因を考えること」。
「ミツバチと蜜源植物の専門家」の視点からの佐々木先生は「大きな視点に立って、まずは山の生態系、様々な生きものと共生している植物を護るということから、過剰に増えているシカ肉を食べること 」。
「超高層ビル街で養蜂をしている当事者」の視点からの高槻先生は「余計なことをしない、深く考えない、自然の変化に気づく感覚をもつこと」。
「低層住宅街で養蜂をしている当事者」の視点からの水城先生は「例えば、子どもや他の人と自然について顔を突き合わせたコミュニケーションをとること、そして、知っていることを相手に伝え合うこと」。

今の状況が当たり前というのではなく、変化に気付くこと。少し目線を変えて周りを見渡してみること。そして、私たち人間だけではない、他の生きものたちも地球に生きるメンバーとして、役割を担っているということに気付くこと、知ること。

参加していただきましたみなさん、ご協力していただきました諸先生方、港区立エコプラザのみなさん、ありがとうございました!

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